後縦靱帯骨化症を知るためのハンドブック

前縦靭帯骨化症

フォレステイル病とも呼ばれる前縦靭帯骨化症の症状や治療法、後縦靭帯骨化症との違いなどについて解説します。

前縦靭帯骨化症のとはどんな病気?

背骨の前にある前縦靭帯が骨になってしまう病気です。

脊髄を圧迫することはないので、この病気単独では治療を必要としないケースが多いです。

しかし前縦靭帯骨化症を発症すると、後縦靭帯骨化症など脊髄神経を圧迫する病気を合併することがあります。その場合には早期治療の対象となります。

また稀に、前縦靭帯骨化症が悪化し、骨になった塊が食道などの器官を圧迫することがあります。これによって嚥下(えんげ)に障害が発症した場合には、単独の発症であったとしても、治療が必要です。

嚥下障害の定義と症状

嚥下とは食事・飲料を飲み下すこと全般を指します。何らかの影響で円滑にモノを飲み込めない状態を嚥下障害と言います。

前縦靭帯骨化症の症状もこのような嚥下障害を引き起こすリスクがあります。これらの症状についても理解しておきましょう。

前縦靭帯骨化症の原因

原因は不明です。仮説として多いのは、遺伝的要因やカルシウムの代謝異常、糖尿病、老化、椎間板ヘルニア、肥満など。

中でも遺伝的要因は、前縦靭帯骨化症が家族親族の中で複数の患者が見られるケースが多いため、有力な仮説と言われています。

前縦靭帯骨化症の検査

前縦靭帯骨化に対してはX線検査を行うのが主流です。更に明確に症状を把握する必要がある場合はCTスキャンやMRI検査などで精査します。

CTスキャンは進行している骨化の状態を判別するのに適していて、MRI検査では脊髄の圧迫程度を判断するのに優れています。

これらの検査結果を踏まえて整形外科の専門医が病状を正確に把握し、治療内容を考慮します。

嚥下障害を併発している場合は、別途、食道造影検査や咽頭部位の内視鏡検査などを行う必要があります。

前縦靭帯骨化症の治療法

後縦靭帯骨化症を合併している場合には、早急に治療を行う必要があります。

しかし、前縦靭帯骨化症のみの初期症状である背中や腰の痛みに対しては、痛み止めを利用しながらの保存療法を行うのが一般的です。

骨化した塊が大きくなり、嚥下障害を発症した場合でも、原則として保存療法になります。ただし、誤嚥(ごえん)の恐れがあるほどに悪化した場合には、手術をして患部を切除することもあるようです。

前縦靭帯骨化症の治療法について

初期症状に対しては、鎮痛剤、筋弛緩剤(きんしかんざい)の投与を主にした保存療法、深刻な嚥下障害に対しては誤嚥のリスクを避けるため患部の摘出による外科手術を行います。

そして、脊髄または脊髄周辺の神経が、徐々に圧迫されている場合も同様に患部を摘出して脊椎の圧迫を除去する外科手術が必要になります。

後縦靭帯骨化症との違いは?

「靭帯が骨になってしまう」という点では共通していますが、名称が違うことからも分かるように、発症する部位が異なります。

背骨を横から見たとしましょう。

背骨の中には、脊髄が通っています。脊椎を横から見て、前(お腹のほう)にくっついているのが後縦靭帯、後ろ(背中のほう)にくっついているのが黄色靭帯です。また後縦靭帯との間に椎間板や椎体を挟み、背骨の前(お腹側)にくっついているのが、前縦靭帯です。

それぞれの靭帯は骨化症を起こすことがありますが、以上のことから分かるように、後縦靭帯が脊髄に触れることはありません。

こうした理由で前縦靭帯骨化症は、単独で発症するだけであれば、さほど慌てる必要はないということになります。

 
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