後縦靱帯骨化症を知るためのハンドブック
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後縦靭帯骨化症はどんな治療があるの?

こちらでは、後縦靭帯骨化症(OPLL)のさまざまな治療法についてまとめています。

後縦靭帯骨化症の治療法は、大きく分けて二つ。「保存治療」と「手術療法」があります。

後縦靭帯骨化症の2つの療法

「保存治療」は、後縦靭帯骨化症によって、脊柱の中の神経を圧迫したり傷つけた場合に起きる痺れや痛みの症状軽減や筋力の回復などを目的としています。

保存治療のページでは、頸椎カラー、鎮痛薬、神経再生薬、リハビリといった後縦靭帯骨化症の保存療法について詳しく解説しています。

「手術療法」は、症状が進行して仕事や日常生活に支障をきたした場合は、手術を行い骨化している組織を取り除く根治治療が必要になります。

手術療法のページでは、椎弓形成術(脊柱管拡大術)や前方固定術などの手術の種類や特徴、手術に伴うリスクについてもまとめています。

  保存療法 手術
特徴
  • それぞれの治療法を組み合わせて実施
  • 治療により症状が悪化するリスクもあるため経過観察が必要
  • 薬物療法は主に痛みの緩和、しびれなどの緩和が目的
  • 手術は年齢・症状・日常生活に不便があるかどうかなどを総合的に判断して決定
  • 症状の進行予防ともしくは症状の緩和が目的
  • 病状が出てから手術までの期間が長いほど術後成績は不良
具体的な治療法(例) 頸椎牽引療法
頸部カラー固定
頸部マッサージ
鎮痛薬治療
薬物療法
リハビリ
頚椎前方到達法
頚椎後方到達法
適している方
  • 無症状でまずは経過観察が必要な方
  • 日常生活に支障はなく経過観察を選ばれた方
  • 日常生活に不便を感じる方
  • 脊柱管の狭窄が強い方(悪化予防目的)

参考:日本脊髄外科学会「頚椎後縦靱帯骨化症」(2018年3月15日確認)
http://www.neurospine.jp/original25.html

参考:「患者さんのための 頚椎後縦靱帯骨化症ガイドブック 診療ガイドラインに基づいて」2007[PDF]
http://minds.jcqhc.or.jp/n/pub/1/pub0033/G0000476/0001

治療方法とリスクについて

手術を行うリスク

後縦靭帯骨化症の手術は、基本的に脊柱管を広げて神経の圧迫をなくすことで症状の緩和や進行を予防する治療方法です。 自覚症状が緩和されるケースは全体の4~6割ほどある一方で、合併症として次のような症状が出る場合があります。

  • 麻痺の悪化
  • 髄液漏(脊髄膜が破れ、中から髄液が漏れる)
  • 血腫(血の塊による神経圧迫)
  • 創傷治癒遅延(傷の治りの不良)
  • 感染症

後縦靭帯骨化症では、手術をしても症状が完治する訳ではなく、症状が残る可能性や、こうした合併症のリスクもあります。他にも、術後に首や肩に痛みが残ったり、腕が上がらなくなるケースもあります。また手術後に骨がつかなくなれば再手術が必要となる場合もあります。

手術をしても全ての患者さんが元どおりに回復するわけではなく,ある程度の症状が残る可能性があります。手術成績に影響する要素は,ケガの既往,年齢,脊髄障害の程度,術前あるいは術後合併症の有無,症状が出てから手術までの期間,MRIの画像上で脊髄の写り具合(輝度)の変化の有無,などが挙げられています

出典:「患者さんのための 頚椎後縦靱帯骨化症ガイドブック 診療ガイドラインに基づいて」2007[PDF]
http://minds.jcqhc.or.jp/n/pub/1/pub0033/G0000476/0001

保存療法でも同じことが言えますが、後縦靭帯骨化症は治療が必要な一方で、治療をすることで合併症や副作用のリスクが伴う病気です。 リスクをしっかりと医師から説明を受けた上で、場合によってはセカンドオピニオンなどで自分に納得のいく治療を選択していきましょう。

手術を行わないリスク

後縦靭帯骨化症の手術を受ける目安は「階段を降りる際に不安定」「箸での食事がしにくい」など日常生活動作に支障をきたす場合です。JOAスコアと言って神経障害の程度を測る検査で17点満点中12点以下と症状が比較的重い場合には、手術が進められることになります。

手術は確かにリスクも伴いますが、発症してから手術を受けるまでの期間が長かったり、JOAスコアが低く神経症状が重い方の場合は、術後の成績も芳しくない傾向にあるようです。

重症化してからの手術となれば予後が悪くなる点は、手術を行わないリスクとして挙げられるでしょう。

また、症状が出る前予防的治療として手術をするケースもあります。ただし、その是非についてはお医者さんの間でも意見が分かれるところです。ただし、後縦靭帯骨化症の患者さんが転んだりしてケガをした場合、脊髄損傷になるリスクがあります。こうなれば、手術をしても予後が悪くなってしまいます。いくら気をつけていたとしても転倒などが防げないケースもあるでしょう。予防に関する是非は個々の医師、もしくは患者さんの判断に任されることとなりますが、こうしたリスクがあることは十分認識しておきましょう。

手術前の症状の程度は,手術の結果にかなり影響を及ぼします。また,転倒などの軽い怪我がきっかけで脊髄損傷になる頻度は2.1%,頸髄症が出る頻度は13%という報告があります。ケガをした経験がある患者さんの40%以上が,脊髄症状を持っていたという報告もあります。したがって,頸椎後縦靭帯骨化を持つ方にとって,ケガは脊髄障害の危険因子の一つです。しかも,ケガがきっかけで脊髄症状を発症した患者さんは手術成績が悪いという報告が多い為,症状がなくても早めに手術をした方が良いとの意見もあります。

出典:「患者さんのための 頚椎後縦靱帯骨化症ガイドブック 診療ガイドラインに基づいて」2007[PDF]
http://minds.jcqhc.or.jp/n/pub/1/pub0033/G0000476/0001

後縦靭帯骨化症の手術療法を受けた方の声

手術療法を行っている患者さんも全国には多数いらっしゃるので、こちらも参考にされることをおすすめいたします。

「手術をした方の体験談」のページでは、後縦靭帯骨化症の手術を受けた方の体験談をいくつか掲載してします。

病院で医師から手術を勧められたものの、実際にどのように行われているのか心配になる方もいらっしゃることでしょう。

こちらでは、手術の流れや、術後の経過と予後、症状が改善した方の感想の声なども多数ご紹介しているので、よければご覧になってください。

 
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