後縦靱帯骨化症を知るためのハンドブック
HOME » 後縦靭帯骨化症ってどんな病気? » 後縦靭帯骨化症の後遺症

後縦靭帯骨化症の後遺症

難病指定されている後縦靭帯骨化症(OPLL)には、後遺症があるのでしょうか?気になる後遺症について解説します。

後縦靭帯骨化症で後遺症はある?ない?

根治させる手術方法や薬がまだ確立されていない後縦靭帯骨化症は、症状が出て一度神経が痛んでしまえば後遺症が残ってしまう可能性は大いにあります。

後縦靭帯骨化症の治療は、症状の程度に合わせて「保存療法」と「手術療法」が選択されます。

そもそも、後縦靭帯骨化症は、靭帯が骨化してしまう病気です。骨化によって靭帯の表面などにある神経が刺激されると痛みが生じます。また、脊髄や神経根が直接圧迫されてしまうと、手足のしびれ・痛み・運動障害などが引き起こされ、頚椎を繰り返し動かすことで症状が悪化してしまいます。

人によっては、全く症状が出ない人もいますが、神経があまりに圧迫されていれば手術で圧迫を除くこととなりますが、術後の回復は症状の程度によってまちまちです。後縦靭帯骨化症で手術を行った後の成績として、ガイドラインでは平均約5割程度の改善が見られるとされています。

後縦靭帯骨化症の後遺症はどんな症状があるの?

では、具体的に後縦靭帯骨化症によって後遺症が残った場合、どんな症状になるのでしょうか?

後縦靭帯骨化症の手術による症状の回復度合いを調査した研究は少ないため、まだまだはっきりとは言えませんが、残る可能性がある後遺症としては次のようなものが挙げられます。

  • 手や指のしびれ
  • 下肢のしびれ
  • 脊髄麻痺の悪化
  • 手術後に左右どちらかの手が上がらなくなる麻痺
  • 喉の腫れ
  • 嚥下障害
  • 声のかすれ

なんだか後遺症を見ていると、「怖い」と感じる方もいるかもしれません。確かに手術自体によって症状が悪化することもありますが、その頻度は手術を受けた患者の約4パーセント程度。手術後に手があげられなくなる麻痺が見られる可能性は5〜10パーセントと言われています。ただし、手があげられなくなる症状は2年以内に回復しているケースが多いとも報告されています。

とはいえ、運動障害や感覚障害などが見られ、脊髄の圧迫が強くなっていれば、保存療法をしても効果はあまり期待できません。手術をしないで症状が悪化するよりも、重症化する前に手術をすることが望ましいとされています。手術のタイミングや必要かどうかは、納得できるまで医師に説明してもらうといいでしょう。

麻痺の後遺症に関するエビデンス

後縦靭帯骨化症の後遺症が発生する確率については、先にご紹介しました。「術後に麻痺が現れるのは5~10%」というデータは、67例の後縦靭帯骨化症患者に対する治療から得られたものです。

神経根麻痺(上肢麻痺)に関しては,骨化浮上術の術後C5 麻痺は67例中6例(9%)に発生し,椎弓形成術後C5,6の神経根性疼痛あるいは麻痺は5〜10%に認められたが,ほとんどは2年以内に回復したと報告している.

出典:Mindsガイドラインライブラリ『頚椎後縦靱帯骨化症診療ガイドライン 2011』

骨化浮上術と椎弓形成術についてのデータとなっていますが、どちらも10%前後となっているため、術式によって大きな差はないと考えられます。また、一時的な症状だと報告されているので、それほど重篤な後遺症とはならないでしょう。

後遺症発生率と症状改善率に関するエビデンス

先にご紹介した「頚椎後縦靱帯骨化症診療ガイドライン 2011」のデータ同様、「難病情報センター」に掲載されている後遺症発生率も、同様の5~10%となっています。このデータは、東京医科歯科大学の大川教授が代表を務める「脊柱靱帯骨化症に関する調査研究班」から提供されたデータです。

頸椎の改善率は50%程度とするものが多く、脊髄麻痺の悪化は約4%、髄節性運動麻痺は5~10%程度と報告されている。

出典:公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センター『後縦靱帯骨化症(OPLL)(指定難病69)』

後遺症発生率が最大10%で、改善率が50%という数字だけを見ていると、後遺症発生率に比べて改善率が低く感じるでしょう。ですが、反対に考えれば、90%の方が手術に成功していて、50%の方が辛い症状を改善していますから、病院や医師の選択を間違えなければ成功率も高いということです。

後遺症が残りやすい人

後縦靭帯骨化症の手術で後遺症が発生しやすい人には、ある特徴があります。それは、「手術時の年齢が高齢だった人」に対して、「頚椎前方法」による手術を行った場合です。

術式の選択方針として,70歳以上で前方手術を行った173例の頚椎後縦靱帯骨化症患者において,20%に術後合併症が発生したとの報告があり,高齢者の頚椎前方法については適応が限られると述べている.

出典:Mindsガイドラインライブラリ『頚椎後縦靱帯骨化症診療ガイドライン 2011』

後縦靭帯骨化症の手術全体で見ると、麻痺の発生率は5~10%程度と言われています。その割合から比較すると、20%という数字はかなり高いことが分かるでしょう。術式によって後遺症発生率に差は発生しないとされていますが、ご高齢の方の場合は、前方法以外の術式で手術が行われると思います。

高齢者は術後の予後も悪い傾向が

手術時にご高齢だった方は、例え後遺症が残らなかったとしても、術後の予後が良くない傾向にあると報告されています。その理由としては、高齢の方では次の条件に当てはまるからではないか、と考えられています。

  • 後縦靭帯骨化症に長期間罹っている
  • 術前の症状が重い
  • 高血圧などの合併症がある
  • 年齢によるモチベーション低下
  • 生活自立度が低い
  • 症状が改善した後に起こる加齢による歩行困難

高齢の方は長年症状を抱えていることが多く、当然長期化すればするほど症状は重くなり、手術をしても十分な改善は望めなくなってしまうのです。また、年齢による体力・気力の低下も原因と言われており、生活自立度が高い高齢者では、予後の成績も良好だったという結果が出ています。

年齢による予後不良は避けられないことですが、気力や体力をつけて、元気に生活している人は、手術で十分な症状改善を実感できている傾向にあります。手術をした後は、特に「元気に過ごすこと」を心がけたいものです。

後遺症が残ってしまったら

もしも後縦靭帯骨化症で後遺症が残ってしまったら、どんな治療方法があるのでしょうか?

結論から言ってしまえば、後遺症が残ってしまった場合には、術後の筋力や体力回復に加えて麻痺や障害に合わせた残存機能を生かすための動作訓練、つまりリハビリテーションを行うほかありません。

残念ながら後縦靭帯骨化症による後遺症は、神経の傷みが原因で、これを根本的に治して改善させることは難しいのです。日常生活を再び行えるようになるために、地道にリハビリテーションを取っていくしかないのです。

後縦靭帯骨化症のリハビリテーションは日数制限がない

難病に指定されている後縦靭帯骨化症は、認定基準を満たしていれば難病患者リハビリテーションに含まれるため、整形外科で健康保険の範疇で受けられるリハビリに日数制限はありません。

一般的に、整形外科の疾患で受けられるリハビリは発症後150日までと定められているため、日数制限がない点は、安心といえるでしょう。

また、後遺症により自宅の改修が必要になった場合には、「身体障害者手帳」を申請・交付してもらえれば障害者住宅整備資金貸付制度や介護保険などが利用できます。

まずはポジティブに、今ある制度をうまく活用しながら日常生活を取り戻せるように歩んでいきましょう。

仕事には復帰できる?

後縦靭帯骨化症の手術を受けた後、後遺症も気になりますが、仕事をしている方なら「職場復帰できるかどうか」も大きな問題です。

手術療法を選択した後縦靭帯骨化症患者の術後の職場復帰に関する研究や報告は少なく一概に言えないものの、「座ってする軽作業」の仕事に従事している人の復帰率が高いという報告もあります。

いったん手術で症状の改善が見られたとしても、数年から10年ほど経った後に、再度骨化が大きくなって症状が出ることも大いにあり得る後縦靭帯骨化症。

診断されて不安でいっぱいになっている方もいらっしゃるかもしれませんが、まずは医師にじっくりと説明をしてもらい、納得できる治療法を選択していくしかありません。

参照:『患者さんのための頚椎後縦靱帯骨化症ガイドブック 診療ガイドラインに基づいて』2007

http://minds.jcqhc.or.jp/n/pub/1/pub0033/G0000476/0001

 
後縦靱帯骨化症を知るためのハンドブック