後縦靱帯骨化症を知るためのハンドブック

症状や予兆

こちらのページでは、 頸椎後縦靭帯骨化症(OPLL)によく見られる症状や検査方法を解説しています。

しびれから始まる縦靭帯骨化症(OPLL)の症状

予兆

頸椎後縦靭帯骨化症(OPLL)は、脊柱を縦に走っている後縦靭帯が骨化して、神経が圧迫されることで神経障害を引き起こす疾患です。

この疾患の症状は2種類の原因によって引き起こされる可能性があり、その症状が引き起こされるメカニズムは次の通りです。

その症状が起きるメカニズムは2つあります。ひとつは神経(脊髄や神経根)が圧迫され,神経の働きが低下して起きるものです。もうひとつは脊椎の動きが悪くなって起きるものです。

出典:公益財団法人 日本医療機能評価機構 Mindsガイドラインライブラリ『患者さんのための頚椎後縦靱帯骨化症ガイドブック』

予兆から本症状にかけて、この両方の症状が現れることもありますが、片方の症状のみしか感じられないこともあるので、両方に当てはまらないからと油断することは禁物でしょう。

頸椎後縦靭帯骨化症の予兆である症状として考えられるものは、次の2つの症状です。

  1. 手や足の指に痺れる感覚がある
  2. 体が硬くなったように感じる

予兆の段階では、手や足の指先にだけ痺れるような感覚があり、指先が動かしづらくなった、細かい作業がしにくくなった、と感じられることがあるようです。

この指先の痺れの感覚は、骨化した後縦靭帯によって神経が圧迫されることで起きる症状ですが、体が硬くなったように感じるのは、後縦靭帯以外の部分の靭帯にも骨化が起きている場合です。この場合、首や腕の動きが悪くなったと感じることがあり、同時に、首や肩甲骨の周辺に痛みを感じることも多く見られます[1]。

初期症状

頸椎後縦靭帯骨化症の初期症状として顕著に現れるものは、予兆としての症状がよりはっきりと現れるようになることに加え、痛みや痺れの範囲が広がってくることです。頸椎後縦靭帯骨化症を発症させてしまった場合、次のような初期症状が現れてくるでしょう。

  1. 腕に痛みを感じる
  2. 指先以外の部分にも痺れる感覚が現れる
  3. 指先での細かな作業ができなくなる
  4. 予兆の段階では、痺れるような感覚は指先だけに現れますが、初期症状では手や足の指先以外の部分にも痺れが広がってきます。さらに、痺れの感覚が強くなってくるため、ボタンを留める、箸を使う、小さなものをつまむなど、指先で行う細かな作業が行えなくなり、運動障害を発症することもあるでしょう。

    また、痺れだけではなく、腕に痛みが現れてくることも特徴的な初期症状と言えますが、頚椎後縦靭帯骨化症になった方すべてに症状が現れるわけではありません。

    ただし,後縦靭帯骨化のあるすべての人に症状が出るわけではありません。骨化が進んで脊柱管が狭くなり,頚髄に圧迫があるにもかかわらず症状の出ない方もいます。

    出典:公益財団法人 日本医療機能評価機構 Mindsガイドラインライブラリ『患者さんのための頚椎後縦靱帯骨化症ガイドブック』

    このように、症状が進行しても無症状の方もいるため、初期症状では特に症状が感じられない可能性もあるため注意が必要です。

    中期症状

    中期症状として、初期症状がさらに悪化したような症状が現れ、痺れや痛みだけではなく、手足の感覚が鈍ってきます。さらに、反射的な動きに異常が見られるようになり、反射ができなくなる、反射するべきではない部分に反射が見られるなどの症状も出てきます[1]。

    1. 足に痺れ、痛み、感覚の鈍化が現れる
    2. 筋力が低下して歩行が困難になる
    3. 腕や足の腱反射異常
    4. 病的な反射が起きる
    5. 麻痺が現れる

    これらの症状は急に現れるものではなく、予兆段階から初期症状を経て、段階的に悪化していきます。

    また、両手の「しびれ」がみられたり、両手を使った細かい動作(箸を使う動作・ボタンをかける動作・ページをめくる動作など:いわゆる巧緻運動)が徐々に出来にくくなったり、両足が足先から段々と「しびれ」てきたり、歩行がなんとなく不自由になるなどの症状が出現します。

    出典:日本脊髄外科学会『頚椎後縦靱帯骨化症』

    このように少しずつ進行していくため、自分でも何らかの疾患に罹っていることに気づきにくいでしょう。はっきりとした症状が現れたときにはかなり進行していた、という可能性も考えられます。

    重度の症状

    後縦靭帯骨化症が重度になると、脊髄の炎症によってはっきとした麻痺が現れるようになり、排尿障害や排便障害など、体の末端以外の部分にも症状が現れてきます。

    1. 横断性脊髄麻痺
    2. 排尿障害
    3. 排便障害

    排尿障害には、尿が出にくくなる、尿の勢いがなくなる、頻尿になるなどの症状が含まれており、排便障害では便秘が見られます。このような症状が頸椎の異常によって起きていると考える方は少ないでしょうが、重度の後縦靭帯骨化症ではよく現れる症状です。

    麻痺が高度になれば横断性脊髄麻痺となり、膀胱直腸障害も出現する。転倒などの軽微な外傷で、急に麻痺の発生や憎悪をきたすことがあり、非骨傷性頚髄損傷例の 30%以上を占めるとする調査結果もある。

    出典:厚生労働省『(PDF)069 後縦靭帯骨化症』

    このように、膀胱や直腸の障害が起きることで発生する症状であるため、他の症状と併せて、排尿や排便の様子もよく観察するようにしてください。

    [1] 参考:厚生労働省『(PDF)069 後縦靭帯骨化症』

    後縦靭帯骨化症はレントゲン、CT、MRIで発見できる

    頸椎後縦靭帯骨化症は、レントゲン検査で見つけることができます。後縦靭帯は、通常はレントゲンには写りませんが、骨化すると白く写ります。そのため、レントゲン検査で判明するのです。

    レントゲン検査で発見しにくい場合や、レントゲンでは診断が困難な黄色靭帯骨化症の検査は、CTやMRIを使って行います。

    CTは、体を透過したX線をコンピュータ処理して、断層写真を撮影する検査です。骨の部分は白く写るため、骨化した部位も白く写り、病気の診断ができます。

    また、MRIは、体の細胞にある水素原子の運動や濃度分布を反映した画像で診断する検査で、脊髄の形を正確にみることができるため、圧迫の程度などを判断することができます。

    そのため、一般的には、CTは骨化の範囲や大きさを判断するのに適していて、MRIは脊髄の圧迫程度を判断するのに適していると考えられます。

    さらに精密な検査を受ける場合には、脊髄造影検査もあります。これは、脊髄の硬膜に造影剤を注入してレントゲンを撮る方法で、脊髄神経や神経根の外観を詳細にみることができます。

    これによって、骨化したことでどのあたりを圧迫し、脊柱管がどのくらい狭くなっているのかを診断することができます。

    ただし、この検査は、造影剤でアレルギー反応を示すこともあるため、入院検査になることが多く、また頭痛や腰の痛みなどの副作用も考えられます。そのため、手術を前提とした場合に行われることが多いようです。

    後縦靭帯骨化症の検査環境の整った医院・クリニック

    後縦靭帯骨化症を正しく発見するためには、やはり検査環境の整った専門の医院で検査を受けることがベストです。本サイトでご紹介している専門の医院の中でも、特に検査環境が整っていると思われるのは「品川志匠会病院」でしょう。 品川志匠会病院は、腰や首、脊椎に特化した医院なので、後縦靭帯骨化症を検査するための設備の充実度には目を見張るものがあります。国内でもほとんど取り扱いのない検査機器の導入もされているので、検査の正確性はかなりの高さです。

    導入されている検査機器としては、「EOS」や「G-Scan」、「O-arm」などがあり、EOSは正面や側面など、複数の面からの全身撮影を同時に行うことができる最新鋭機器です。また、G-Scanは立位でのMRI撮影が可能な検査機器で、EOSとG-Scanの両方を揃えている医院は、国内でも品川志匠会病院だけだと言われています。 O-armは検査のための機器ではありませんが、手術中にCT撮影が可能となる機器で、これによって手術中の器具の方向や位置を確認できるため、より安全性と確実性の高い手術が行えるようになっています。 検査と手術を同じ医院で行えれば伝達不足もなくなるため、万が一手術をしなければならなくなったときのことも考えて、トータルで優れた設備を整えている品川志匠会病院で検査をすれば安心でしょう。

    症状が軽くても病院での診断は必要

    頸椎後縦靭帯骨化症の病気の進み方は、人によってまったく違うと言われています。

    症状を全く自覚することなく、「ちょっと肩が凝ったな」と感じて受診をしたら頸椎後縦靭帯骨化症と診断されたという人もいれば、急に麻痺が現れる人もいます。

    一般的には、軽いしびれや痛みを感じたまま長年を経過すること人が3/4近くいるという報告があることから、経過観察を行いながら、手術以外の治療法を行ったり、特に治療はせずに経過を定期的に観察するのにとどまる人が多いようです。

    しかし、症状の進行が人それぞれだからこそ、病院での適切な経過観察が重要です。違和感を感じていながらも受診をしない、軽症だからと経過観察を怠るのは危険。医師の診断のもと、経過をしっかりと見ていきましょう。

    後縦靭帯骨化症の症状とその後

    後縦靭帯は、頚椎から胸椎・腰椎にいたるまで、すべての背骨(脊椎・脊柱)に存在する靭帯です。 背骨の、積み木にあたる部分の前側には前縦靭帯があり、後縦靭帯と共にこの積み木の部分(椎体)を挟んで動きのしなやかさを保ちつつ、骨がずれないように固定してくれています。

    その中で、後縦靭帯骨化症は、特に頚椎にて起こりやすい疾患です。

    そのため、特に頚椎における後縦靭帯骨化症について、お伝えしましょう。

    後縦靭帯骨化症の症状の現れ方

    後縦靭帯骨化症の症状の現れ方についてお話するためには、その内部を通る脊髄やそこから分枝する神経について説明する必要があります。

    脊髄は、腕や脚、その他の全身に脳からの指令を伝える、あるいは脳へ全身の状態を伝える末梢神経とをつなぐもので、基本的には中枢神経に分類されます。 脊髄は、直径約1cm程ととても細い神経の束でできていて、その前側(お腹側)や横は主に脳からの指令を全身に伝える、筋肉の収縮など体の運動に関わる神経線維が集まっています。 これとは逆に、体の状態を脳に伝えたり、腕や脚の感覚を伝える神経は、脊髄の後ろ側(背中側)を通っています。

    また、脊髄からは腕や脚の筋肉へ刺激を送り、それらが収縮するための指令を送る神経が分枝しています。 この神経は末梢神経と呼ばれ、一つの脊椎とその下の脊椎との間にある小さな穴を通っています。 脊椎は、頚椎7椎・胸椎12椎・腰椎5椎で構成されていますが、そのどこから出ている神経なのか、どの高さに相応する脊髄なのかを、「髄節」という名前で呼んでいます。 例えば、胸椎の4番目の下から出る末梢神経は、第4胸髄と呼ばれています。

    ところで、頚椎から出る末梢神経のほとんどは、肩甲骨周辺や腕、手を動かす筋肉の収縮と、同じ部分での感覚に関与しています。 後縦靭帯骨化症によってこの末梢神経や脊髄が圧迫を受けると、この髄節に対応した部分で症状が現れます。 多くみられる症状としては、腕や手、指先のしびれや痛み、あるいは筋肉に力が入らず、普段持てていたものが急に持ち上げられなくなる、また指先を使った細かな作業が出来なくなるなどです。

    頚髄でも、頭に近い部分から頸の根元に近づいていくにしたがって神経が支配している筋肉や感覚は、肩周辺から指先へと移動していきます。 ですから、特にどの部分での圧迫が強いのかによって、症状の現れ方には差が見られます。

    ただし、後縦靭帯骨化症はその高位によって骨化の程度に差が現れるものでもないようなので、一般的には腕全体あるいは手全体がしびれるなどの症状が見られます。

    それから、この疾患によって脊髄が圧迫されると症状が出現する範囲はさらに広がります。 脊髄のある一か所が圧迫を受けると、それより先、つまり脚側の部分に脳からの指令が伝わらないため、脚の筋肉に力が入りにくくなったり、最悪の場合は脚が完全に動かず、麻痺してしまうこともあります。

    後縦靭帯骨化症を放置するとどうなるのか?

    このような症状が現れる後縦靭帯骨化症を、適切な診断や治療を受けずに放置するとどうなるのでしょうか?

    感覚の症状でいうと、手や指先のしびれや痛みが強くなっていきます。 例えば、眠っている間に手首が不自然な方向に折れ曲がった状態が続いて出たしびれのさらに強くなったようなものが、まったく緩和されることなくずっと続きます。 精神的なストレスをもたらすとともに、特に人の場合は布団にもぐり眠るまでの間は、自分の体に現れる症状に敏感になるため、しびれや痛みで気持ちが休まらず、なかなか眠れないようになることがあります。

    また、運動に関係するものでは、腕や手の力が入らずものを持ち上げられなくなったり、靴下が履けない、洋服のボタンを留められない、お箸を使っての食事が出来ないなど、日常生活が制限されます

    脊髄への圧迫が強くなると、脚に力が入らず階段の上り下りできない、歩いていてつまずくことが増える、ひどくなると歩くことすら出来なくなってしまう危険性があります。

    また、転ぶなどして軽い力であっても首を反らすような動きを引き起こすことがあると、脊髄が完全に圧迫されて機能が消失し、両手足が動かない四肢麻痺をきたす恐れがあります。

後縦靭帯骨化症と間違いやすい症状

後縦靭帯骨化症の症状は、この疾患特有のものという訳ではありません。特に初期症状に関しては他の疾患でも現れる可能性があるため、後縦靭帯骨化症を見逃さないためにも、似た症状を持つ疾患を知っておくことは大切でしょう。

後縦靭帯骨化症の初期症状と間違いやすい症状を持っている疾患は次の通りで、手足のしびれや不自由になる感覚、首や肩に痛みが現れるなどの症状が共通しています。

  1. 頚椎症性脊髄症
  2. 頚椎症性神経根症
  3. 頸椎椎間板ヘルニア

頚椎症性脊髄症は、椎間板や骨の出た部分によって頚髄が圧迫される疾患です。加齢とともに頸椎が変形することで引き起こされやすくなるため、高齢の方が罹りやすい疾患だと言えるでしょう。

頚椎症性神経根症は、椎間孔にできた空間が狭くなり、神経根が圧迫される疾患です。こちらも頚椎症性脊髄症と同様、加齢とともに頸椎が変形することで発症します。

これらの3つの疾患は、いずれも整形外科や神経内科が受診するべき科目となるため、手足の痺れ、首や肩の痛みなどの症状が現れた場合は、自己判断せずに整形外科か神経内科に行って相談することをおすすめします。

 
後縦靱帯骨化症を知るためのハンドブック